20人が本棚に入れています
本棚に追加
本当は食べながら、あきらくんに私が泣いた理由を話すつもりだった。
でも、気づくと食べ切ってしまっていた。
「あきらくんが食べ終わったら、少し聞いてほしい話があるの」
スプーンをお皿の上に置いて、あきらくんに伝える。
「俺なら食べながらでもいいですよ?」
あきらくんがそう言うならと、こくりと頷く。
「…実はね。私…ずっと長い間、同じ職場の上司の人とお付き合いしていたの…」
あきらくんがほぼ視線を私に向けながら、オムライスを食べる。
「…でも、それは普通のお付き合いではなくて、相手には奥さんも子供もいて、いわゆる不倫ってやつだったの」
私の話にあきらくんは別段表情を変えることはなかった。
それを確認してから話を続ける。
「…自分がしていることが悪いことだって分かっていた。でも、彼と過ごす時間は仕事で疲れた私の心を癒やしてくれたの。彼も私を愛してくれた…だから、いけないことだと知っていても、関係を続けてしまった」
あきらくんがどこか真剣な表情で私の話に耳を傾けてくれていた。
あきらくんの手は止まって、スプーンはまだ食べかけのオムライスが載った皿に置かれている。
「…でも、彼が大阪にある本社に異動になった時、彼に家族を捨てるから私に一緒についてきてくれと言われたの…その時、目が覚めた」
そう語りながら、後悔が胸をギュッと締めつける。
最初のコメントを投稿しよう!