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「…私は他人の家庭を壊すようなことをずっとしていた。そのことにようやく気づいた…ううん、それは虫が良すぎるか…知っていたけど、知らないふりをし続けてきたの。私の前で優しく笑ってくれる彼を失いたくなかったから…」
ありのままの感情を晒す。
今、私は一体どんな顔をしているのだろう?
あきらくんはそんな私の表情を黙ってじっと見つめていた。
「彼の異動を機に私たちは別れた。勿論、彼は奥さんと別れることなく家族一緒に大阪へと引っ越して行ったわ…それを知った時に私は家族と別れるから私についてきてくれと言った彼の言葉を疑った…そして、そんな最低なことを考える自分が堪らなく嫌いになった…」
そう語る私の目からは不思議と涙は出なかった。
きっと、さっき十分過ぎるほど泣いたからだろう。
「それから月日が経って、私の中で不倫していたことを都合よく風化させていった。でも、最近彼がこっちに戻ってきて、彼と再会して気づいた…私の中で不倫していたことへの罪悪感は全く消えていなかったことに…」
視線を落としながら、一方的に語り続ける。
あきらくんは私の話をどう感じているのだろう?
やっぱり軽蔑するかな?
…ううん、あきらくんは優しい。
きっと、私を責めたりはしないだろう。
「…今日、会社で私のことを話している会話をふと耳にしたの」
少し顔上げて、話を続ける。
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