2-7

16/25
前へ
/259ページ
次へ
「でも、その分仕事はする。勿論、成果も出す。だからこそ、そのための精神的な癒しが欲しいんだ」 「不倫という癒しですか?」 冷たくそう言い放つ。 すると、たかしさんがほんの少し寂しげな表情を見せた。 「…妻とは別れる。親権も全て妻に譲るつもりだ」 たかしさんの言葉に胸がギュッと締め付けられる。 「原因は私ですか…?」 俯きながら訊いた。 「それは違う。妻は君のことをよく知らない。でも、俺が違うところを見ているのには気づいていたようだ。だから、何というかこれは俺と妻の問題で間違えても君のせいなんかじゃない」 たかしさんが私の問いを否定する。 しかし、それはあくまで認識の問題であって、私が要因であることには変わらないのだ。 もしかしたら、たかしさんは私と出会わなくとも、別の女性と不倫していたかもしれない。 …そして、結果的に奥さんと別れるという未来は一緒だった。 たかしさんなら充分にあり得る。 ただ、たかしさんと不倫をしたのは間違いなく私だ。 今更、後悔してもそれは消せやしない… 「…あなたが家族を捨てる選択をしたことが私が関係ないと言われても、納得出来るわけがないじゃない。たしかに離婚という選択は私には関係ないかもしれない…そもそも私なんかが入っていい領域じゃないのだから。でも、あなたの家族を傷つけたことには変わりはなく、私はその十字架をこれからも背負っていかなけはればならない…あなたを好きになってしまったという愚かな私の罪を…」
/259ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加