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私の長い台詞を彼は真剣に受け止めていた。
普通ならこんなことを言われれば狼狽えたり誤魔化したりするものなのに、彼は私の言葉をただ黙って受け入れている。
…そんなところがきっと私が彼に惹かれた理由だろう。
「…君が罪を被る必要なんてない。周囲の目を気にする必要もない。でも、君の性格からして、気にするなと言っても無理だろう。バッシングから君を守ってみせる…なんて言っても所詮は詭弁だ。君はきっと深く傷つくだろう…でも、そんな傷ついた君の心には寄り添える自信はある」
たかしさんの言葉を私は黙って聞いていた。
「…だから、俺たちやり直さないか?不倫という関係ではなく、ちゃんとした形で…」
彼のその言葉が私の胸に深く突き刺さる。
そして、堪らず両手で頭を抱えた。
「…やめて。ふざけないで…」
「ふざけてなんていない。俺は真剣だ。君さえ手に入れられたら、何を失っても構わない」
たかしさんがそんなふざけた台詞を吐いた。
「…何それ?もしかして、ここに戻ってきたのもそのため…?」
腕の間から彼を睨む。
「ああ、それもある。でも、仕事だから戻ってきた。君だけが理由じゃないよ」
…彼の言葉が上辺だけなのか本心なのかは分からない。
でも、そんなのはもうどうでも良かった…
「…私たちはもう終わったの。あなたに別れを告げてあなたがそれを受け入れた。それで全て終わったのよ…」
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