Hello again

２－７

「…騙したことは悪かった。あと、君を怒らすつもりもなかったんだ…君に何もかも否定されてつい君を怒らせたくなってしまった。本当にすまない…」

たかしさんが素直に謝って私に向かって頭を下げた。

「…分かった。君のことは諦める…すぐには無理でも努力するよ」

たかしさんは顔を上げて私に言った。

「…奥さんとはどうするんですか？私はもうあなたとやり直すつもりはありません。なら、あなたも今まで通り家族といる選択をした方がいいんじゃないですか？」

感情的になって口調が彼と二人でいた頃に戻っていたが、意識して元に戻す。

「さっきも言ったが、それは君には関係ないことだ。あくまで俺と妻の問題…だから、別れる決意は変わらない」

たかしさんのその宣言に心が酷く傷んだ。

関係ないと言っても関係ないわけがない…

私のせいだ…

彼の奥さんや子供からしたら、私は悪女に違いない。

「…無理に話をさせて悪かった。最後に一つだけ聞かせてくれないか…？」

たかしさんが私にそう言いながら、椅子から立ち上がる。

私は勢いよく立ち上がってからずっと立ったままだ。

「…何ですか？」

彼に訊き返した。

「…もし、あの時君が…のりこが別れようという提案を俺が受け入れていなかったら、俺たちは別れていなかったかな？」

そう私に訊いた彼の表情はとても穏やかで優しい表情をしていた。

その表情は昔からよく私が見ていた夢に出てくる顔がぼやけた男性を思い出させる。