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今はその表情がはっきりとしてしまったけれど、それまでは私の中ではこの人のこんな表情だった。 私を惑わしてきた大好きだった彼の表情… 「…たかしさんが私の提案を拒んでいたとしても、私の気持ちが変わらなかったと思います」 「…そうか」 たかしさんはそう答えて、ゆっくりと会議室を出て行く。 私はその後ろ姿をただ眺めていた…彼がいなくなったあともしばらくはそのまま立ち尽くしていた。 ◯ 会議室を出たあとのことをあまりよく覚えていない。 いつの間にか自分のデスクに戻っていて、しなければならない仕事に取り掛かっていた。 意外にも仕事には集中出来ていたので不思議だ。 でも途中、何度か足立くんや別の男性社員に仕事のことで話しかけられたが、頭に全く入ってこなかった。 でも、普段通りを懸命に繕ってはいたので、周囲から大丈夫ですかと心配されることはなかったのは幸いだ。 割と私の心情に気がつく足立くんも今日は仕事に追われていて、それどころではなかった。 「お疲れ様」 定時より一時間経った頃に私は席を立ち、まだ残っている足立くんに声を掛けた。 だけど、仕事に集中している様子だったので、どうやら聞こえていないようだ。 いつもなら、今日はその辺にして早く帰りなさいと声を掛けるか一緒に手伝うかするのだけれど、今の私にそんな余裕は残っていない。 私は足立くんの横を通り過ぎて、イベント企画課の部屋を出た。 そして、会社を出て外に出た時、ようやく雨が降っていることに気がつく。
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