エピソード1 さとう めい

2/11
前へ
/259ページ
次へ
入学式の日だ。 私が和月くんに恋心を抱いてしまったのは… 「じゃあ、また後でね」 高校の校門をくぐってすぐのところでシンプルなセミフォーマルワンピースを見に纏ったお母さんがそう言って私に手を振った。 隣でスーツ姿のお父さんも同じように私に手を振る。 私は両親に手を振って、案内に書かれていた教室がある校舎へと向かった。 見慣れない顔が多いけれど、同じ中学だった知ってる顔もたくさんいる。 校舎に入ると、私はいつの間にか顔馴染みの何人かで廊下を固まって歩いていた。 「どのクラス?」 「私は2組」 「おっ、俺と同じクラスじゃん」 「げっ、私もだわ。また、アンタと同じなの…」 「あっ、俺も2組。よろしく」 「えっ〜みんな2組?じゃあ、俺だけ違うクラスかよ…寂しいよ〜」 「めいは3組だよね?なら、寂しくないじゃん」 「…いや、俺は1組だ。ああ…さとうは3組なんだ…重ねてショック…」 「気を落とさないで北条くん。私も一人だよ」 と北条くんの肩に優しく触れた。 すると、藤島くんが間にグッと入ってくる。 「さとう。寂しいときは言えよな?隣のクラスから飛んでいくからさ」 と言った藤島くんの後ろ襟を掴んで、かおりが力強く藤島くんを退かせた。 「アンタは行かなくていいの。私とともみが行くから」 かおりが藤島くんに顔を近づけて忠告した。 かおりが藤島くんを好きなことは知っているので、思わずクスッと笑ってしまう。
/259ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加