エピソード1 さとう めい

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席へと移動する際、保護者席に座る両親と目が合った。 そして、席に着き、新入生全員が着席したところで入学式が始まる。 順調に進行していき、新入生代表の挨拶の場面になった。 私の知り合いには代表の挨拶をするという生徒はいなかったので、誰がやるのかは知らない。 「新入生代表、和月あきら」 先生に呼ばれて、後方で音と共にはいと言う返事が聞こえる。 パッと振り返ると、例の背の高い男子が壇上へと歩いていく姿が見えた。 あの人がやるんだ… と他人事のように壇上へと上がる彼の姿を見ていた。 見ている限り、彼に緊張している様子はない。 しかも、随分と落ち着いている。 そして、彼は真っ直ぐこちらを見ながら、代表の挨拶を述べた。 素直にわぁー凄いと思ったのは確かだ。 しっかりしていてるし、背が高くそれでいて顔が良い。 周囲を軽く見渡すと、彼に見惚れている女子生徒が何人かいた。 それは仕方ない。 私たちの年頃にとって、大人びた彼は特に輝いて見える。 でも、私は苦手だ。 尚更、仲良くなる要素はないだろう。 と言っても、まだ恋がよく分からない。 本気で誰かを好きになるとかが私にはよく理解出来ないんだ。 かおりは藤島くんのことが好き。 冨樫くんはともみのことが好き。 それは知っている。 …でも、実際のところはよく分かんないんだ。 こういう気持ちを誰かに相談したいけれど、思い当たる相談出来る相手とは最近会えていない。
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