エピソード1 さとう めい

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入学式が終わり、新入生は列になってそれぞれの教室に戻っていく。 そして、私は教室に戻って自分の席に座った。 全員が着席したのを確認して、担任の先生が話し始める。 手短なホームルームが終わると、今日は解散となった。 そして、皆帰り支度を始める。 私も両親が外で待っているので、急がなきゃと鞄を机の上に置いた。 すると、ふと鞄に付いていた物がないことに気がつく。 えっ!?なんで!? 私は席から立ち上がり、鞄を隈なく調べた。 勿論、その周囲も… …ない! イルカのキーホルダーがない! たしか、教室に入るまではあったような気がしたんだけど… 私は教室をうろうろと歩き回り、床に落ちていないか探した。 だけど、どこにも見当たらない。 他の生徒が帰り支度を済ませて、教室を出ていく。 どうしよう… 鞄に付けている以上、いつかは落として失くすだろうとは思っていたけれど、いざそうなると諦めたくない感情が込み上げてくる。 …あれは小学生の頃、のりこちゃんに貰った大切な物だ。 私の小学校の運動会を見に来てくれた時、私が一番になれずに落ち込んでいたら、のりこちゃんがよく頑張ったねとくれたピンク色のイルカのキーホルダー… のりこちゃんは親戚のおばさんではない。 お母さんの親友。 でも、本当の叔母のように思っている。 物心ついた頃から、よく私と遊んでくれたのりこちゃん。
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