エピソード1 さとう めい

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「おっ、何してんの?」 友達が彼に話しかけた。 もう一人の友達もそれに気づいて近寄ってくる。 「あの子がイルカのキーホルダーを失くしたらしくて手伝ってるんだよ。暇ならお前らも手伝ってくれ」 彼が私を見ながら友達に説明をする。 「いいよ。まあ、任せといて、探し物は案外得意だから」 彼の友達の一人が私の方を見ながらそう言って、すぐに私の失くしたキーホルダーを探し始めた。 「まっ、あきらが探してるなら俺も探すわ」 もう一人の友達は私の方を見ずにそう言って、周囲を見渡しながら、キーホルダーを探してくれる。 「ありがとう…」 そう答えて、私も再び探し始める。 でも、五分くらい経ってもなかなか見つからない。 もう、他の生徒は全員帰ってしまっていた。 …本当にこの教室に入るまではあったのかな? と自分の記憶に自信がなくなってきた。 そう諦めかけた時だった… 「あった!」 後ろのロッカーの前に屈んでいた友達にあきらと呼ばれていた男子生徒が嬉しそうに声を上げる。 すぐさま、私は後ろのロッカーへと駆け寄った。 他の男子も彼に近づいてくる。 「コレだろ?」 彼は立ち上がり、私にそれを見せた。 彼の手にはピンク色のイルカのキーホルダーが載っている。 「うん!コレ!私が失くしたキーホルダー」 私は歓喜の声を上げて、イルカのキーホルダーがある彼の手を握った。 でも、彼の手に触れていることに気づいてすぐに離す。
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