エピソード1 さとう めい

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「あっ、ごめん。私、そろそろ行かなきゃ…両親を待たせてる」 そう言って、慌てて自分の席に戻る。 そして、失くさないように鞄の中にイルカのキーホルダーを入れた。 「今日はキーホルダー探してくれてありがとう。じゃあ、また明日」 私は鞄を背負って、後ろのロッカーにもたれている三人に向かって手を振った。 「うん。また明日」 三人を代表して、和月くんが爽やかにそう言って私に手を振った。 小畑くんと藤沢くんも手は振ってくれている。 教室を出た時、心臓の鼓動を強く感じた。 …和月あきらくん。 落ち着きがあって、なんとも大人びているのに、時より見せる幼い笑み… 教室を出た時から、両親のところに着くまで、私の頭の中は彼でいっぱいだった。 …これが恋。 私の初恋だ。 …でも、この初恋は叶うことはない。 別に初恋が実らなくても良かったんだ。 …けれど、自分が予想していた以上に初恋は苦いものになり、私の中で大切なものが壊れてしまうなんて、この時は微塵も予想していなかった。
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