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「あっ、ごめん。私、そろそろ行かなきゃ…両親を待たせてる」
そう言って、慌てて自分の席に戻る。
そして、失くさないように鞄の中にイルカのキーホルダーを入れた。
「今日はキーホルダー探してくれてありがとう。じゃあ、また明日」
私は鞄を背負って、後ろのロッカーにもたれている三人に向かって手を振った。
「うん。また明日」
三人を代表して、和月くんが爽やかにそう言って私に手を振った。
小畑くんと藤沢くんも手は振ってくれている。
教室を出た時、心臓の鼓動を強く感じた。
…和月あきらくん。
落ち着きがあって、なんとも大人びているのに、時より見せる幼い笑み…
教室を出た時から、両親のところに着くまで、私の頭の中は彼でいっぱいだった。
…これが恋。
私の初恋だ。
…でも、この初恋は叶うことはない。
別に初恋が実らなくても良かったんだ。
…けれど、自分が予想していた以上に初恋は苦いものになり、私の中で大切なものが壊れてしまうなんて、この時は微塵も予想していなかった。
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