エピソード2 足立 りく

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あれは俺がこの会社に入ってまだ間もない頃のことだ。 研修中の休憩時間に同期の女子社員の会話が聞こえてきた。 「そう言えば噂で聞いたんだけど、昨年までいたイケメンな課長さんとイベント企画運営部にいる高田って人がなんか不倫関係だったらしいよ」 「えっ?何その社内恋愛系漫画みたいな話?て、何でそんなことアンタが知ってるのよ?」 「えっ、だってこの会社に大学の先輩が働いてて、前に先輩と飲みに行った時に教えてくれたから」 「へぇ、そうなんだ。で、その先輩は男?女?」 「…まっ、それはどっちでもいいじゃない」 「あっ、絶対男だ。何?その先輩がいるからこの会社に入った訳じゃないよね?不純だわ…」 「…不倫するよりははるかにマシでしょ」 「まあね…ああ、イベント企画運営部には配属されたくないわ。そんな話聞かされたら、会った時にどんな顔したらいいか分かんないわよ…」 「それ分かる。私もその話聞いた時はその部署はパスって思ったもん」 「…実際、不倫なんてどこにでもあるし、漫画やドラマでも当たり前のように取り上げられているけど、いざ現実に話を聞くとやっぱり軽蔑しちゃうなぁ」 「私も。不倫はちょっと無理」 別に聞きたくて聞いていた訳じゃない。 何気に聞いてしまったしまったんだ。 …イベント企画運営部か。 その会話を聞いてからは、なるべくそこには配属されたくないとなんとなく思っていた。
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