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このみが私の後方へと視線を移す。
私は振り返り、さっきまで立っていた場所を見る。
すると、制服を着た青年がこちらをじっと見ていた。
その視線を避けるようにこのみに視線を戻す。
「…ううん、知らない子。御神木のことでちょっと訊かれたから、答えてただけ…」
咄嗟に嘘をつく。
「そうなんだ。てか、先にお参りしないでよ…しかも、よりによってメインスポットを…」
このみが小さくため息を漏らして、文句を言う。
「…ごめんごめん。あまりに立派な御神木だったから、つい惹き寄せられちゃって…」
惹き寄せられたのは本当だ…
「まあ、いいや。じゃあ、もう一度あの御神木に行きましょう?」
このみが笑顔で言った。
「…ごめん、私もやっぱり御手洗。あと、私はもう拝んじゃったから、悪いけどあそこは一人で行ってくれる?お願い…」
手を合わせて、このみに謝る。
「えっー!何それ!まあ、いいけど…もう勝手なんだから…」
このみは頬を膨らませながら、御神木がある方へと一人で歩いていく。
私はこのみを見送るため、恐る恐る御神木の方へと視線を移す。
すると、御神木の前に青年の姿が無くなっていた。
そのことに安堵するも、なら警戒せずにこのみともう一度御神木を拝めば良かったと後悔する。
…でも、私はあの青年だけではなく、もう一度御神木に近づくのも怖かったのだと思う。
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