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デュラ王(ちちうえ)を殺害した私のことをとっくに許されていて、心の広い方なのだ。早晩、準備を整え、ご即位してもらわなければ。忙しくなるぞ」  これではまるで、王政復古ではないか。プラティにかかった術は解かれていなかったのか。と疑問に思ったカノラは、プラティの側近が城跡にいた人たちで固められていることに、今更思い至った。  カランデュラが亡くなったというだけで、何故術が解かれた、と考えたのだろう。百年も前の、革命家の使った呪文の絵──四つで一つのフィオレ王朝の絵で、今だに城跡とペタル村の行き来している。と、いうことは、まだ術が解けていないのだ。だったら、宝飾品の術の方も解けていないのでは?  だって、どう考えてもプラティは王政復古を望んでいる。そうでなければ、カランデュラのご子息を即位させるなんて考えないだろう。宝飾品の術は解けていない。王政復古の目的は変わらず、カランデュラが亡くなったことで、目的を達成させるだけなのでは?  だから、カランデュラのご子息は、プラティが自分の父親を殺害しても、罪に問わない。つまり、ご子息も変更をご存知なのだ。カノラは眩暈がした。  今わの際のカランデュラの言葉を思いだす。 『……教えた……呪文でやられるとは。でも、我が王都の夢は……潰えぬ。貴様の、その様子なら……魔術師であったとしても……止められぬであろう……』  あれは、このことを言っていたのか。ジェンシャンの話で、フィオレ島の住民が税で苦しんでいるのを知れたのに。このままフィオレ王朝が復活したらどうなるのか。  鉄壁の城を攻めた革命家がフィオレ王朝を滅ぼすのに使った呪文は「ヨセッメ」だと知っている。それを使えば王政復古をとめられるのかもしれない。使わなければ、住民がますます苦しむ可能性がある。けれどそれを使ったら、プラティはどうなる?  結論の出ない思考。まるで、迷路の中に迷い込んだようだった。  私は、あの迷路から出られてなかった?──  カノラは木々に覆われたメイズ山で、今まさにぬかるんだ山道に足を囚われているのではないか、と辺りを見回したのだった。
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