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「さっき、呼ばれた奴らは、上達の早い者たちだ。きっと、奥の間で呪文を教えてもらってるんだろうよ」 「そうなの? ジェンシャンは?」 「お、俺はこれから、だ。ほら、雑用は他にもやることがあるんだろ。行った行った」  追っ払われ、外に出るカノラ。建物の壁伝いに、奥の間の方に向かった。  どんな呪文を習っているのだろう。  野鳥からカランデュラに助けてもらったとき、彼は何か短く唱えていた。あんな風に、自分も呪文を使えこなせたら、すぐにもメイズ山に入ってプラティを探すのに。  そういえば、助けてもらったとき、カランデュラは自分の前方にいたことをカノラは思い出した。  城跡に行く道は土砂崩れで、カノラが歩いた道ぐらいしか使えそうでないのに、自分の後方ではなく、前方にいたカランデュラ。何処から来たのか。  他の道? それとも、呪文を使って来た?  そんな呪文があるのなら知りたい。興味津々で奥の間の片開きのドアに、耳をそばだてようとした。  キィと金属の短い音がして、ドアが引かれて開く。ドアに耳を寄せていたカノラは、そのまま体をドアに寄りかかって倒れそうになった。 「邪魔だ」  ドアを開けたのは、カランデュラ本人だった。  カノラはペコリと頭を下げ、小さくなって奥の間を後にした。 「ケチ」  教えてくれてもいいのに。諦めきれないカノラだった。  
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