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   咄嗟に右横に飛び退いた。サーベルが、逃げる前のカノラがいたところの空を切る。ブンと空気を震わす音がすぐ近くでした。鏡で気付かなかったら、今頃あのサーベルの餌食になっていたタイミングだ。  空振りした形になった黒い影は、 「泥棒っ!!」  と、そのまま一歩踏み出し、サーベルを振り上げる。 「プラティ?!」  更に後方に飛び退きながら、敵の顔を判別できたカノラは慄いた。  サーベルを振り上げた敵──プラティも、声の主に我に返ったかのごとく、動きをとめた。 「カノラ……」  信じられない思いなのであろう、プラティは目を見開いた。 「プラティ、生きてた。やっぱり、生きてた」  喜びのあまり、カノラがプラティに抱きついた。  カノラがこの城跡にいることに、プラティの方はまだ信じられない心地でいた。カノラを守りたくて道場に通っていたのに、そのカノラに(やいば)を向けたのだ。  茫然自失のプラティの様子に、病気やケガをしていないか、心配の面持ちで尋ねるカノラ。  その表情を見たプラティは、ああ、やっぱりカノラは凄い、と目を見張った。こんな危険なところに自分を探しに一人で来たことも、刃を向けた相手の体調を心配しているとこころも。自分を信じてくれている様子にプラティは、自分の方が守られていると感じた。  だからカノラに、一年をどう過ごしていたのか尋ねられ、素直に答えていた。飲み水は近くの川から調達し、食べ物は城の周りにいる野鳥や獣を狩っていたのだ、と。話を聞いてカノラは驚いた。人を襲ってくる野鳥や獣を食べていたなんて…… 「でも、プラティ、どうして? どうして帰ってこないの? おじさんも、おばさんも、凄く心配されているのよ」  
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