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 いくら食べ物を確保できた、として帰ってこないなんて酷すぎる。責めるカノラに小さな声がした。すまない、と。 「理由を教えて。帰り道が分からないの?」  尋ねながら、カノラは辺りを見回した。  宝飾品の陰に隠れて、フィオレ王朝の風景画が見えた。そこにも、先ほどの文字が記してある。そうなら、あの文字を読めばきっと帰られる。 「プラティ、帰りましょう。凄く簡単に帰られる方法があるの」  絵に近付こうとしたのに、プラティは首をふった。 「今のままじゃ、ダメなんだ」 「え?」 「今の政府じゃ、豪雨のときに何も対策が出来なかった。カノラ、知っているか。百年前のフィオレ王朝は諸外国と同盟を組んでいたんだ。困っている国を助け合う、そんな国だったんだ」  カノラは愕然とした。プラティはいったい何を言い出したのか。これではまるで、王政復古を願っている者のよう。 「カノラ、俺たちは今こそ立ち上がらなければならない。政府を倒さなければ、生活は苦しいままなんだ。そのために、ここで訓練していたんだ」  気が付くと、外を隔てる壁の、反対側の崩れた壁の向こうから何人も人影が現れた。みな、メイズ山に入って、帰って来なかった者たちだった。 「みんな、待ってくれ」  現れた人たちにプラティは叫んだ。 「カノラは敵じゃない。俺たちの仲間だ」  現れた人たちは、拳をつき上げた。歓声がうねるがごとく響いた。  否定することも出来ずに、カノラはうろたえた。そこへ、宝飾品の陰の絵からカランデュラが現れた。
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