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カノラは急いで、首を振った。
「いや、貴様はあの絵を取り返しに来たのであろう。王政復古の同志たちを貴様らは、以前いとも簡単にねじ伏せぎおって。私がどんな思いであの絵を手に入れたか」
つまりは、政府からあの絵を盗んだ、ということなのだろう。だから、当時の政府は躍起になって、フィオレ王朝の絵を持っている人物をことごとく捕らえたのだ。
カノラは自分の父母が捕まった、そもそもの原因がわかって身震いした。
「震えるほど、真実を言い当てられたか」
カランデュラが高笑いをした。
「貴様の嘘など、すぐにわかる」
宝飾品の一つ、聖剣を取り出したカランデュラ。
「貴様が宝飾品の術にかからぬのも、政府側の魔術師であったからであろう」
宝飾品に術が? だからみんなは、プラティは、帰らず政府を倒すなど、馬鹿げた思想にとりつかれたのか。
はなから、財宝よりもプラティを取り返したかったカノラに、宝飾品の術などかかるはずもない。が、術にかからず、思い通りにならない人間の存在を理解できないカランデュラは、聖剣をカノラに振りかざす──
「ギョウボ!」
プラティの叫び声だった。何の呪文か、カランデュラに加勢しようと動き出した周りの者たちの動きが止まる。更にカランデュラの動きがスローモーションのようになった。その間にカランデュラとカノラの間に体を滑らせたプラティが、サーベルでカランデュラを迎えうつ。
「デュラ王であっても、カノラに手出しはさせない!!」
息をのむカノラ。
相打ちだった。聖剣がプラティの肩に。サーベルがカランデュラの首に。倒れる二人。カノラは悲鳴をあげてプラティに駆け寄った。その背にカランデュラの息も絶え絶えの声がした。
「……教えた……呪文でやられるとは。でも、我が王都の夢は……潰えぬ。貴様の、その様子なら……魔術師であったとしても……止められぬであろう……」
ほんの一瞬ほくそ笑み、カランデュラはこと切れた。
「あれ? ここ、どこだ?」
「なんで、ここに?」
術が解けたの?
周りにいた人たちがざわめく中で、カノラは叫んだ。
「助けてください!! プラティが!」
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