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   一年の年月が流れた。  相打ちでこと切れたカランデュラは、あのとき周りにいた人たちの手で城の近くに手厚く葬られた。  プラティの方は、肩に手負いをおったが、急所が外れていた。カノラとその場にいた人たちとで慎重に抱え、絵を使ってペタル村に戻ってきた。  行方不明だった村人たちを連れ帰ったかたちとなったカノラは、ペタル村の人たちに英雄視された。それまでカノラを非難していた村人たちも手の平を返したよう。けれどカノラは、それを取り合っている暇はなかった。  連れ帰ったプラティは急所が外れていた、とはいえ重症なのだ。プラティの両親とともにカノラは、連日看病にあたっていた。  そのかいあって、回復したプラティ。城跡に残された財宝を使って、諸外国と貿易を始め、同盟を結んだ。  財宝を私欲に使わず、島のために働いたプラティは島中の人気を集め、いつしか投票で島民の代表になった。  代表になったプラティは、城跡にいた者たちで側近を固め、法を整備した。罪もなく捕らえられていた者が釈放され、カノラは父と母と再会した。  結婚を機に、家を広く建て替え、プラティの両親とともに住む毎日。カノラの父母も呼び寄せたかったが、「古書の管理をしているほうがいいよ」とのことで、一緒には住まなかった。  毎日、仕事に追われる息子を見て、プラティの両親は、 「まったく、あのバカ息子は何を考えているのやら」  口では文句を言いつつも、何人もの使用人を抱え、船で世界を飛び回る息子の姿に誇らしげな笑顔だった。  そんなこんなで瞬く間に過ぎ去った一年だった。ある昼下がりのこと。 「カノラ様。お客様がお見えです」  従者の後をついて、広間に通された者がいた。
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