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「ジェンシャンじゃない。久しぶり」  帽子を手に恐縮しきって一礼するジェンシャン。 「そんな、畏まらないで」  椅子を勧めている間に、侍女が紅茶を淹れカップをテーブルに運んだ。 「カノラ、昔のよしみで頼みを聞いてくれ!」  勧められた椅子にも座らず、床に正座し、頭を下げるジェンシャン。  なんでも最近、税が重くなって、生活が苦しくなっているという。 「プラティが主張していることも分かるんだ。いつ起こるかもしれない災害に備えなければならないってこと。けど、そのために今食っていけないなんてあるか?」  ジェンシャンの訴えに、カノラは衝撃を受けていた。プラティは今、外交に飛び回っているから、帰ってきたら相談することを約束し、邸宅の門のところまで見送った。  広間に戻るとき、庭先から使用人たちの話し声が聞こえた。使用人たちは洗濯物を取り込んでいる様子だった。 「ねぇ、知ってる? メイズ山の野鳥が村にまで飛んできたって」 「らしいわね。獣も村の道具屋の店に入ってきたって聞いたよ」 「ほんと?」 「ほんとよ。物騒になったわよね」  野鳥や獣の話なんて、メイズ山の中にいるみたい。カノラの心がざわつく。そこへ、 「ただいま戻りました」  プラティが帰ってきた。すぐにジェンシャンの話と、野鳥や獣が村に降りてきていることをカノラは話そうとしたのに。 「カノラ、聞いてくれ。中央の山脈むこうの、西の村に住む、デュラ王のご子息と会うことが出来たんだ」  プラティの言葉に、自分が話そうとした内容がかき消された。  今更、カランデュラの名が出てくるとは。プラティは興奮しているのか、カノラの様子に気付かない。
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