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 豪雨のせいで、田や畑が冠水。前年度の残りでしのぎを削っていたのだが、ある日、 「俺、メイズ山に行く」  と、プラティが言い出したのだ。なんでも百年前、17世紀中頃に革命によって滅びたフィオレ王朝の城跡が、この豪雨で出現したのだという。 「危険よ。行かないで」  メイズ山の土砂崩れで現れた城跡など、危険極まりない。いつまた土砂崩れが起こるとも知れないのだ。カノラはもちろん、プラティの両親も引き止めた。 「でも、城跡に財宝が眠っているって話なんだ。手に入れられれば、父さんも母さんも、それにカノラも楽に暮らしていける。もし、財宝が沢山だったら、村のみんなも助かるだろ」  引き止める腕を振り払って、プラティは山へ向かっていった。  プラティと同じように山に入った村人も、誰一人帰ってきていない。それどころか、帰って来ない人々を探すため組まれた捜索隊まで帰って来なかった。 「なんで、メイズ山なんかに行ったんだろうな」  鍬や鋤を置いて、カノラの目の前の切り株に腰掛けるジェンシャン。  迷路、という意味で呼ばれている「メイズ」山に何故入っていったのか。問われなくとも、その理由にカノラは心当たりがあった。
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