第三章 夢の形、愛のカタチ

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 物件を契約し、五月末のオープンを決めた。準備期間は三ヶ月しかない。佳生は自分ひとりでと言ったが、僕は一緒にやることだけは譲れなかった。 「体調を心配してくれてるのはわかる。無理はしないって約束するから」  睡眠障害は続いていた。頻度は減っているが夢を見た翌朝はぐったりとしてしまう。そんな状態で厨房にたつのは危険だし、お客様へも失礼だ。僕は「ぜったいに克服してみせる」と気持ちを強くする。 「店名、ずっと前から考えてたのがあるんだけど」  僕が切りだすと、佳生は待ってたよと言ってくれた。 「ノートに書いてるだろ。いつ教えてくれるかなって思ってた。……ん? バーアンドダイニング・ウェロ? 英語か? 俺、点数悪かったからな」 「僕が高校生のときに勝手に造った名前だからね。佳生の佳と朋希の希のつもりなんだ」 「えっ」 「佳く生きるっていい名前だなって。英語で良いはwell、僕の希は望みって意味でhope。ウェルとホープを続けて言ってるうちにウェロって聞こえて」 「佳く生きる……」 「かっこいい名前だよね」「佳生と朋希でウェロ」「なんか……子供っぽいかな」 「最高じゃん! 俄然やる気出てきた!」  両手をブンブンと振り回されて、なんだかとても愉快になる。つないだ手から佳生の熱が流れこんできて、僕をどんどん高揚させる。
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