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第1話 特別な存在
佐々木さん。彼は私にとって特別な存在だ。
彼とシフトが被っている日は、いつもの倍頑張ろうと気合いが入る。
「おはようございます」
「お疲れ様です」
こんな業務な挨拶でも、相手が佐々木さんなら魔法の言葉のようにキラキラして聞こえる。
特に彼の笑顔は格別だ。整った顔後くしゃりと崩れて、ビー玉のような丸い瞳が細く垂れる。その笑顔を見ると、自然とこちらも笑顔になる。
佐々木さんは老人ホームで働く私の先輩だ。
「彼は佐々木さん。1番歳が近いから話しかけやすいと思うよ。佐々木さんは23歳だから、田中さんの3歳上かな?」
入社当日に、指導者が紹介してくれた。佐々木さんは綺麗な顔で
「よろしくお願いします」
と言っていた。
佐々木さんは大人しい性格で、業務連絡以外で誰かに話しかける姿を見た事がない。それに休憩中はイヤホンをつけてスマートフォンをずっと触っているから、最初の頃は冷たい人だと思い近寄りがたかった。
その印象が変わったのは去年の夏。夜勤業務をしていた時のこと。
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