恋とデートと妄想と私

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「じゃあ、またね」私は彼の車を降りて、笑顔で手を振った。 「うん、またね、ありがとう、楽しかった」彼は車の窓をおろし、笑顔で手を振った。  私は家まで送ってもらった。しかし、今は午後4時だ。日暮までまだ時間がある。  朝、9時に彼は迎えにきてくれた。お父さんの車で。青色のホンダのフィットだ。目的地は箱根のラリック美術館になった。  お弁当を作るつもりだったのだけれど、ラリック美術館のオリエント急行の内装で食べるランチがあると、コウタくんがいうので、弁当はやめになった。ちょっとホッとしている。  彼もちょっと緊張しているのか、それとも運転に集中してるのか、ドライブ中は言葉が少ない。 「箱根って初めて!ラリックって有名なのかしら?」と私が話をしても 「うん、そうなんだ…、うん、ラリックなんだ…」となんだか要領を得ない。  美術館に無事着いて、展示を見て回る。コウタくんの緊張も取れたみたいで、事前に勉強してきてくれたラリック情報を話してくれた。私も笑顔で相槌を打つ。  お昼をそのオリエント急行の内装のレストランで食べた。そのコンパートメントの内装をラリックが手がけたので、それを移設したみたいなことを言っていた。  彼はだいぶんとラリックの勉強をしたらしく、たくさんの情報、うんちくを披露してくれた。なんだか難しい芸術の話もたくさんしてくれたけれど、私はただ感心したふり?ふりじゃないけど、難しいことはわからないから、笑顔キープで話をずっと聞いていた。私のために勉強してくれたんだなって思って。それが嬉しかったから。  それでランチが終わって、お土産売り場でちょっとお土産を見て、いくつかかわいいガラス細工を買った。それで美術館近くのカフェに寄った。 「コウタくんは大学で何勉強してるの?」私が何気なく聞いた質問に必死で答えてくれる。 「文化人類学を専攻してる。主に東南アジアの」と言っていた。  それをまた私のわからない単語を使って色々説明してくれた。専門分野の話をするのが好きなのね。コウタくん、子供みたい。  それで2時ぐらいになって、話がちょっと尽きて二人して黙った。 「ええっと、今日はこれで帰ろうか」といきなり彼が言った。 私は心の中で、ええっ、もう帰るの?どうして?まだ2時じゃん。箱根ってもっと色々あるはず!と思った。  私、何かミスした?私の服?髪型?何?喋り方?食べ方?何がいけなかったの。お金?高速代?半分出すよ。  でも、ここで引きとめて、めんどくさい女だと思われるのも嫌だし、私どうしたらいいの。  「うん…」と言った。帰りも運転中は会話は弾まずで、気まずい。  で4時に家に着いた。自分の部屋にこもり、今日の嬉しかった部分を再生したり、悲しい部分を再生したり、頭の中がぐちゃぐちゃになった。  彼の頭の中は、何を考えているの?
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