優太side2

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学校から家に帰ると、優太は洗面台で何度も手を洗った。 石鹸やハンドソープ、果ては洗顔料まで使い洗った。 学校でも何度か手を洗っていたが どうしても違和感や気持ち悪さが消えなかた。 たかが女子の頬に触れただけなのにこんなに拒否感が出ることに自分でも 驚いていた。 「ただいま~あれ?」 「ねえね?」 優太は手を洗ったまま振り返った。 高校の制服を来た姉は心配そうに自分を見つめている。 「優太、どうしたの?何か暗そうな顔をしているけど・・」 「・・ねえね、何度もないよ」 優太は蛇口を止めると姉に向きなおり何とか笑顔を浮かべた。 そんな優太を見ても姉は不安げな表情をしたままだった。 「何かあったら何度も話してね、新学期になって いろいろと変わることもあるかもしれないから」 「ねえねこそ、高校どうなの?何か問題ない?」 「特に・・問題はないかな。クラスの人たちは良い人そうだし・・」 「それなら良かった」 その後二人で夕食を食べた。 この日、祖父は仕事の都合で朝早くから出ていて、また 夜遅くにならないと帰ってこられなかった。 そのため祖父は「夕食は自由にしなさい、何か買いたいならテーブルに金がある」とダイニングのテーブルにいくらかのお金を置いた。 しかし2人はそれには手をつけず自分達で夕食を作った。 メインのおかずは姉が作り、その他の物は優太が用意した。 メニューは キャベツと鶏肉のいためもの、白米、冷ややっこ、えのきの味噌汁。 自分達が言うのも美味しそうな出来である。 「ねえねはお料理上手だね」 優太は姉が作った炒め物を、白米と共に美味しそうに頬張った。 「そう、ありがとう」 姉はそんな優太を見て嬉しそうに笑った。 その表情を見て優太も嬉しい気持ちになった。 その翌日のことだった。 「あれ?優太顔に何か出来ているわよ」 「え?」 朝起きた時、姉に指摘されて優太は洗面台の鏡を見た。 するとそこには赤くぷっくりとした小さな粒があった。 「これ何?」 その部分を指で触ってみると軽く痛みが走った。 「触っちゃだめだよ、これはニキビだね」 姉は優太の顔を覗き込んだ。 それを聞いて優太はやだなあ、と気まずい気持ちになった。 ニキビ自体より、それを姉にさらしたことが嫌だった。 そんな優太に姉は言った。 「お薬つけようか?私の部屋にあるよ」 姉は自分の手を洗うと、指で塗り薬をすくい優太のニキビに塗った。 姉の顔が自分の顔に近づき、頬に姉の指が触れる。 姉の指の感触が伝わる。 (やっぱりねえねに触られると気持ちいいな) 優太は心地よさから目をつぶった。 「はい、終わり。気になってもこれ以上ニキビに触れちゃだめだよ」 姉は優太にそう言った。 「ねえね、ありがとう」 優太は次に姉にこう言った。 「ねえね・・お願いがあるんだけど」 「何?」 「ねえねの頬に触れてもいいかな、少しだけでもいいから」 「え?いいけど・・私の頬にも何かあるの?」 「特にあるわけじゃないけど、ねえねの頬に触りたくなったから」 「え・・」 優太の言葉に姉は戸惑ったような表情を浮かべたが、断ることはなかった。 優太は姉の頬に触れた。 暖かいぬくもりと頬の柔らかさ、と一見晴美と頬の性質は似ているように 思える。 しかし触ったときの感じは晴美の時とは全く違っていた。 「いつまでも触っていたい・・」 「ええ?」 思わず感じたことを口に出してしまい、その言葉に姉は少し頬を赤らめた。
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