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誓いを新たに、丁寧に結び直されたリボンをフェリチェは翻す。大切なリボンがさらに素敵なものに生まれ変わったようだ。これは確かに、二人だけの特別な証だ。
「なぁ、輪結びは互いに交換するものなのだろう? ならばイードにも、フェリチェから輪を結びたいんだが……」
「こういう時は揃いのものを贈るものだと思いますが。イェディェル殿にリボン……ですか?」
「うーむ……身につけられる輪っかか……」
指輪にチョーカー、イヤリング、ブレスレットにアンクレット。どれも似合いそうだが、馴染みがない。普段から家事や散策の邪魔になるものは身につけることのないイードに、何を贈るべきかは悩ましいところだ。
捨て置かれては意味がない。せっかくなら、普段使いしていられるものが理想だ。
「そうだ。腰帯の飾り紐はどうだ?」
ローブの足捌きをよくするために、腰で丈を調節するため、イードは腰帯を締めている。服によって合わせる色や柄は様々で、洗い替える必要も考慮すれば帯自体より飾り紐が無難であると言えた。
「イードの……邪魔にならなければ、だが」
「大切に使うよ」
「本当か? 喜んでくれるか? ならば今夜から早速作るぞ!」
フェネットの最上の想いを込めた贈り物、それは自らの被毛を用いた編み飾りや刺繍だ。
兄の結婚祝いに作った以来だと、フェリチェは張り切る。
「胴回りを確かめてもいいか? 兄様より少し細いくらいだろうか」
採寸用の巻尺を置いてきてしまったため、イードの腰に腕を回し、一先ずの目算を立てた。うきうきとするあまり、自ら抱きつく格好になっていることには気付いていない。
腰帯の上に回されたフェリチェの腕こそ、結ばれた輪であるとイードは僥倖に身を任せた。
〈おしまい〉
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おそらくこの後起きたこと
①フェリクスからのお呼び出し。
「全部見てたよ。いや、仲が良くていいんだけどさぁ、時と場所を考えてくれないかなぁ。いや、いいんだけどさぁ。お父さん複雑……」的なお話があったかと。
②女友達との恋話
姫様のピュアさにキュンキュンしているフェネット娘たち。たまに余計なお世話の下世話な知恵を付けさせてしまうこともあるので、ルタは困っている。
③イードの手の甲に残ったキスマーク
まさか姫様はやるまい。では誰が……と里の中で密かな噂になる。
「あたし、見たわ! ルタが婿殿の手に口づけしてるの!」ザワッ……
※毒虫に刺されたところを処置していただけですというよくあるオチ。
この後、一旦ユーバインに戻り、引っ越し等の準備を調えてから、本格的にアンシアで暮らすことになります
ユーバインでも住民の皆さんが、プレ結婚式みたいなことをやってくれそうだなぁと想像できる幸せな二人です
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