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「我らフェネットは、深く愛し合った番ほど生まれてくる子も強くなる。お前や、お前の兄弟が優秀なのも、わたしと妻が深い絆で結ばれていたからだ」
「知っています。だからわたくしは、お父様とお母様のような、真実の愛で結ばれた夫婦に憧れているんですもの」
「そうだろう? フェリチェよ、愛の前に種族の違いなど些末なこと。真実の愛を求めるお前が、ただ一度恋に敗れたからといって人間を毛嫌いし、自ら世界を狭めてどうする。それで最良の婿が見つかると思うか?」
フェリチェは目一杯、首を横に振った。
「わかったなら、それでよい。広い世界に生き、唯一無二の番を見つけるがいい」
「それならば、お父様。フェリチェはお願いがございます!」
どっしりとしたフェリクスの膝を飛び降りて、フェリチェは自分の尻尾を背に這わせた。敵意はありません、と示すフェネットの礼儀だ。そのまま深々と最上級の伏礼をとる。
「このアンシアには、人間とフェネットしか住んでおりません。世の中には、もっとたくさんの獣人族や、肌の色も様々な人族がいると聞いています。フェリチェはその者たちとも会ってみたい! その中から運命の婿を探すのです!」
「おお、フェリチェはなんと勇敢で賢い娘か。よかろう」
フェリクスは鋭い爪で髷をもう一房切り落とした。それをルタに手渡すと、フェリクスはあれこれと指示を出した。
「今すぐ金に換えて、フェリチェの旅支度を調えてくるのだ。それからユーバインへの船の手配を」
「はい」
「ユーバインは帝国ヒルダガルデの要衝にして、世界有数の港町。元より様々な種族の者が集まっているが、日々ひとの出入りの激しい街だ。多くの出会いに恵まれることだろう。まずはそこで、運命とやらを探すとよいだろう」
「お父様、ありがとう! わたくし、必ず素敵な婿を連れて帰ってきますわ!」
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