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パパ活
シティホテルの一室。
ぼんやり天井を眺めていると、顔を覗き込まれた。
「上の空だったね。朱美ちゃん」
「……ごめんなさい。この間会った友達が変な事言うから」
一戦交えた後、ベッドの上で煙草をふかす西条さんは笑っている。
この人は私の『パパ』の一人だ。
何処かの社長をしていて、割と長い付き合い。
結婚する予定の直樹よりも、ずっと。
「何言われたの?」
「困ったことあったら言ってね、だって」
「何だい? ソイツ。男?」
「女だよ。中学の同級生。パシリちゃんだったのに、私より先に結婚してさ〜。ま、冴えない旦那とブサイクな子供育てて、オバサンになってるだけだけど」
「相変わらず性格が悪いな。こんなに可愛いのにさ」
……余計なお世話だよ。金以外取り柄のないオッサンのくせに。
「だって、私より先に結婚しちゃうんだもん。ちょっと悔しかったの。西条さんには奥さんいるでしょ? どんなに好きでも、私たちは結婚できないじゃない」
「ま、そうだよなあ」
上目遣いで心にもないことを言うと、オッサンは嬉しそうだ。
歳の割にはイケおじだけど、お金をくれなきゃ視界にも入れたくない。
私は、内心の黒さを押し隠せる程度には女優だ。
男にこの本性を知られたことなんか、ない。
「頻度は落ちるかもしれないけど、ちゃんと会いに来るね」
私は結婚しても、パパ活を辞める気が無いのだ。
直樹は確かに医者だけど、大学病院って実は給料が安いし、激務だ。
家でただ彼を待っていたって仕方ないし、あまりお金もないなら、こうして『バイト』してる方が効率いいし。
「旦那にバレない様にしろよ?」
「ならキチンと避妊してね?」
私の言葉に、西条さんは気まずそうに笑って誤魔化した。
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