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四角い牢獄
……電話に出てくれない。しかもこれって着信拒否じゃない?
ああ、イライラする。
そもそも直樹が悪いのに、何で私がこんな目に遭うのよ。
確かに彼の身の心配はしなかったが、それ位のことで腹を立てるなんて、器の小さい男だ。
「朱美ちゃん、どうしたの?」
今日の『パパ』が、心配そうにこちらを見る。
この人は真剣に恋愛してるつもりだから、直樹のことは内緒なのだ。
「あ。ごめんなさい。ちょっと酔っちゃったみたいです」
「そうなんだ。あまり顔に出ないんだね」
「うん……。美味しくて飲みすぎちゃった」
……ああ。いつまでこうやって男に媚びていればいいの?
もうこんな生活、やめたかったのに。
どんなに豪勢なホテルの部屋でも入った途端、そこは四角い牢獄に変わる。
好きでもない男の性器を咥え、作り声をあげ、相手を満足させるまでは終えられない苦行。
私はここから出る為に、奉仕をするしかない。
手に入れてしまえば興味がなくなる、ハイブランドのバッグやアクセサリーを手にする為に。
私の魂が真に欲するものが分からないから、身を飾る沢山の物が必要なのだ。
でないと、この心の渇きがちっとも癒えないんだもの。
「朱美ちゃん、気持ちいい? 僕のこと好き?」
「……うん。凄く好き」
好きな男なんて、もうずっといない。
セックスは仕事なのだ。……少なくとも今の私にとっては。
こんな私を誰も知らない。知られたくないのに救けて欲しい。
……ああ。直樹だけは、私を救けてくれると思ってたのに。
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