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消えない過去
「……もしもし」
『どうしたの? 朱美。電話なんて珍しいね』
子供の話し声と、呑気な返事。
美波は中学が同じだったから、出処はコイツだと思ったのに……。
『何? 黙ってちゃわかんないよ』
「……アンタ、知らないの? 私の事……」
『? 何の話してんの?』
堂に入ったとぼけぶりだ。
美波は、私が思ってたよりもずっと女優なのかもしれない。
「とぼけないで! 茉那への嫌がらせの証拠写真持ってたの、アンタでしょ!?」
『……嫌がらせ? それって、広瀬くんの仕業だったって話のヤツでしょ? 八代さんのお家の塀に、スプレー缶で酷いこと書いたってあの子が補導されて……。違うの?』
「? アンタじゃないの? 暴露系インフルエンサーに情報提供したの……」
『はあ? 私が? そんなに暇じゃないし。どんなメリットがあんのよ、そんなん』
馬鹿にしたみたいな言い草。
「この間、困ったことがあったらって……言ってたから」
『……中学の時に朱美がパシリにしてた男の子達が、同窓会でアンタをネタに盛り上がってたって聞いたの。本当に襲われるんじゃないかって、心配してあげてたのに』
何それ。散々ヤラセてやったのに。
私が身体を許す代わりに、ヤツらが汚れ仕事をする。
そんなのバーターじゃん。
『……やっぱりアンタは、一度痛い目みた方がいいみたいね。じゃあ』
直樹と同じように、プツリと切られた電話。
まるで縁もゆかりも、全て断ち切るみたいに。
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