第一章 マンションの管理人

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第一章 マンションの管理人

 金曜日の夕方四時過ぎ、公園で楽しげに遊ぶ小学生達を羨ましく思いながらトボトボと家路を歩いていた。入社して二年目、手探り状態とはいえ、念願のインテリアデザインの仕事に僕はやる気に満ちていた。まさか、社長が金庫の金や通帳類を持ち逃げしてしまうなんて悪い夢でも見ている様だった。とうとう、給料の遅配の可能性を言及され、転職が現実的になって来た。 「……トイレットペーパー切らしてたんだ」  暗雲たる気持ちで、アパート近くのスーパーマーケットへと向かった。  目当ての岩石メンチカツは揚げたてで、良い匂いがした。でも今は少しでも節約しなければ。夕飯の惣菜はタイムセール時に出直すとして、トイレットペーパーとティッシュボックスを抱えて店を出た。 「あれ、あの人……」  自転車置き場で、うずくまっている男性が目に入った。 「どうしました?」 「……腰が」  男性は苦しそうに呻いた。 「救急車を呼びましょうか」 「すぐそこのマンションで管理人をしているんだ。少し休めば動けるから」  男性の視線の先にベンチがあった。 「分かりました」  男性に肩を貸し、ゆっくりと立ち上がる。 「すまないが、それも」  男性が牛乳の入ったレジ袋を指差した。
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