第一章 マンションの管理人

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「ありがとう。助かったよ。休憩中に買い物に出たんだけどこの様だ。昨日、ちょっと無理をし過ぎたな」  腰をさすり苦笑いした。 「管理人の仕事って大変なんですね」 「君みたいな若い人ならなんて事ないよ」  男性はじっと僕を見つめた。 「ーーまさか、出会ったばかりの青年に頼むことではないな」  男性の素振りはやけに芝居がかっていて、すごく話を聞いて欲しそうに見える。 「……何ですか?」 「いやね、自分の代わりに管理人をしてくれる若い人を探しているんだ。ただ、条件に合う人材がなかなか見つからなくてね。君、仕事は?」 「デザイン会社に勤めています。店舗の内装とか看板のデザインとかする」 「ほう、良い仕事をしているね」 「僕もそう思ってたんですけど、色々あって。転職も考えているところです」 「ほう、そうかね」  男性の目がキラリと光った。 「僕には管理人の仕事は無理ですよ!」 「私も最初はそう思ってたんだけどねえ。やってみると思った以上にやり甲斐があるし、給与もね……」  耳打ちされた金額は、自分の月収より遥かに多かった。 「そんなに貰えるんですか?」 「敷地内の草刈りや清掃、入居者のクレーム対応など色々あるからね。でも、一人でやれば大変だが、他にもスタッフはいるからね。少しは興味を持ってくれたかな?」 「まあ、そうですね」  アパートの近くなら仕事さえ終われば自由な時間も今より増えるし、何より収入が増えるのはかなり魅力的に感じた。
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