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「ありがとう。助かったよ。休憩中に買い物に出たんだけどこの様だ。昨日、ちょっと無理をし過ぎたな」
腰をさすり苦笑いした。
「管理人の仕事って大変なんですね」
「君みたいな若い人ならなんて事ないよ」
男性はじっと僕を見つめた。
「ーーまさか、出会ったばかりの青年に頼むことではないな」
男性の素振りはやけに芝居がかっていて、すごく話を聞いて欲しそうに見える。
「……何ですか?」
「いやね、自分の代わりに管理人をしてくれる若い人を探しているんだ。ただ、条件に合う人材がなかなか見つからなくてね。君、仕事は?」
「デザイン会社に勤めています。店舗の内装とか看板のデザインとかする」
「ほう、良い仕事をしているね」
「僕もそう思ってたんですけど、色々あって。転職も考えているところです」
「ほう、そうかね」
男性の目がキラリと光った。
「僕には管理人の仕事は無理ですよ!」
「私も最初はそう思ってたんだけどねえ。やってみると思った以上にやり甲斐があるし、給与もね……」
耳打ちされた金額は、自分の月収より遥かに多かった。
「そんなに貰えるんですか?」
「敷地内の草刈りや清掃、入居者のクレーム対応など色々あるからね。でも、一人でやれば大変だが、他にもスタッフはいるからね。少しは興味を持ってくれたかな?」
「まあ、そうですね」
アパートの近くなら仕事さえ終われば自由な時間も今より増えるし、何より収入が増えるのはかなり魅力的に感じた。
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