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「とりあえず、マンションで詳しい話を出来たらと思うんだけど、どうかな? 私、岩瀬と言います」
「はあ、僕は岸本です」
「よし、岸本君。行こうか」
岩瀬は先ほどの腰痛は何処へやら、スタスタと歩き出した。
「えっ、ちょっと待って下さい」
慌てて追いかけると、点滅し始めた信号を軽やかに走って渡って行ってしまった。
「牛乳も置いてっちゃうし」
ティッシュボックスとトイレットペーパーと牛乳を持って、岩瀬が入って行ったグレーのマンションへ向かうと、管理人室の窓口の前で待っていた。
「急に走るからびっくりしましたよ」
牛乳の入った袋を渡す。
「すまん、すまん。有望な若者が釣れてーーじゃなくて、出会えて嬉しかったんだ」
そう言って、管理人室のドアを開けた。
「どんな事をするのか体験して行ってよ。決めるのはそれからでも遅くないから」
「研修みたいな感じですか?」
「そう、そんな感じ。スタッフがそろそろ心配して来る頃だから」
男性か女性かだけでも先に知りたい。
「どんな方なんですか?」
「説明するより会った方が早いと思うんだ」
勧められたパイプ椅子に腰を下ろすと、ギイと管理人室の床下収納みたいなハッチが開いた。
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