第一章 マンションの管理人

5/13
前へ
/68ページ
次へ
「だけど、温泉に入って治ったでしょ?」 「ああ、幸運だった。でも、いつでも入れるわけじゃないし、それに人間は年取るのが早いんだよ」   カプリは悔しそうに唇を噛んだ。  「そんなこと言われたら何も言えないじゃない」 「ごめんよ。でも、今直ぐに動けなくなるわけじゃないさ。そうなる前に後継者を育てておかなければならないって話だよ」  話がどんどん大きくなって、自分の手には負えない気がして来た。二人が人間がどうとか口にするのも怖い。 「あの、やっぱりちょっと」 「いやいや、こっちの話は終わったから。カプリ、案内を頼むよ」  手を合わせて頼む岩瀬にカプリはため息をついた。 「ついて来なさいよ」  カプリは無言で床下のハッチの下にするりと身体を滑り込ませた。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加