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カプリの足音は猫みたいに静かだ。静かすぎて怖い。
「もっと、灯りがあった方が親切じゃないかなあ」
「じゃあ、あなたが何とかしなさいよ」
それはマンションの管理人としてやるべき事なのだろうか。
「一つ目! 連れて来たわよ」
「カプリさん!」
ホテルのフロントを想像していたら、とんでもなく粗雑な岩がカウンターがわりに置いてあるだけだった。
「この人が新しい管理人さん?」
絵本やアニメでお馴染みの一つ目小僧がパリッとした白いシャツと黒いズボンをはいていた。高校の学生服を着た小学生みたいだ。
「正しくは管理人候補の岸本よ。何だ、あなた肝が座ってるじゃないの」
「え?」
「彼、妖怪。一つ目小僧くらい知ってるでしょ」
一つ目小僧は恥ずかしそうにはにかんだ。
「まさか、コスプレじゃないですよね?」
「特殊メイクでもマスクでも無く、素顔ですよ」
舌をべえっと出した。
「ぎゃっ」
驚いてのけぞった僕の横で、カプリの腕が素早く動いた。
「驚かす癖、やめなさいよ」
カプリが一つ目小僧のつるりと丸い頭をパーンと叩いた。まるで猫パンチの様な素早さだ。
「ええと、岸本君は岩瀬さんからどこまで説明を聞いてますか?」
一つ目小僧は頭をさすりながら僕を見た。
「マンションの管理人とだけ」
「それでよく平然としていられるなあ」
二人は珍しいものでも見る様に僕の顔をじっと見た。
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