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「夢かなって思うくらいには動揺してますけど」
今のところは一つ目小僧とカプリとは会話になっているから、まだ冷静でいられるだけだ。
「ここがあなたの仕事場、管理するのはマンションじゃないの」
「しいて言うなら、ここは日本式ダンジョンとでも言うんでしょうかね。西洋のお客さんを招くのに、ダンジョンものを読んで勉強しました」
一つ目小僧が本棚から漫画を抜き出して、パラパラとめくった。
「ねえ、言っておくけど夢じゃ無いわよ。何か言いたい事があるならーー」
「マンションじゃなくて、ダンジョンの管理人かよ! クソ、似てるな! 騙された!」
興奮して息が荒くなった僕の手に一つ目小僧は優しくタブレットを乗せた。
「地下五階へ行く頃にはきっと慣れますから」
「……慣れますかね」
「ごちゃごちゃ言ってないで、とりあえず話を聞きなさいよ」
カプリが横からタブレットを操作した。
「カプリさん、そんな強引な」
「習うより慣れよ、なんでしょ」
一つ目小僧は、確かにと頷く。
「そのタブレットにはフロアガイドと住人達のデータが入っています。試しに地下一階のデータを呼び出してみて下さい」
言われるがまま、タブレットを操作して地下一階のフロアガイドを表示させる。
「すごいですね」
「え?」
「このタブレットを難なく操作されるなんて素晴らしいです。岩瀬さんなんて、基本操作を覚えるのも大変でした。温厚で我慢強い神社の氏子さんやお寺の檀家さんに覚える気はあるのかと叱られて、双方なだめるのが大変でしたもん」
カプリが面白くなさそうにフンと鼻を鳴らすと、また猫の髭が飛び出した。
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