自然は甘くない

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自然は甘くない

「これ……食えるのかな……」  今しがたもぎ取ったブルーベリーみたいな果実。  見た目はブルーベリーそっくりだが、香りはまったくの別物で、香辛料みたいな香りがする。  決して、果物から漂ってきて良い香りではない。  口に入れて大丈夫な代物なのだろうか。 「……ええい、死にはすまい!」  俺は思いきってその果実を噛み砕いてみた。 「あれ、意外とスパイス効いてて旨…………からっ! なんだこれ、めちゃくちゃかれぇ! 唐辛子かよ!」  食べて損したわ……これ、めっちゃ辛い……。  けどこの辛さ、スープにしたら身体を暖められて良いかもしれない。  幾つかもぎ取っておいて、悪くはなさそうだ。  まあ鍋が無いから作れないんだけどね。 「あー、ホント辛かった……ウォーターで口直ししとこ」  と、早速慣れてきた魔法で唐辛子成分を中和していた最中。 「キシャアアアア!」 「うおっ! ……って、またお前か! どりゃあ!」    もう何度襲ってきたかわからない食虫植物のモンスター、プラントを反射的に真っ二つ。  死骸から、食べると小さな傷や疲労を回復する薬草みたいな葉っぱを採取して、先に進んでいく。  ちなみにプラントを倒したら、またスキルを手に入れた。  スキルの名称は【甘い香り】。  小さい虫を誘き寄せる、デコイ系のスキルだ。  一度使ってみたけど、小さな虫がわんさか寄ってきたから、二度と使わないと誓った。   「……にしても、どこまで行っても森、森、森。 いい加減見飽きてきたな……」  遠くを見つめてもまだ先は見えない。  本当に果てがあるのか、不安になってきた、そんな頃。 「シャアアアアアッ!」  不意に近くから蛇のような鳴き声が聴こえてきた。  
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