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受難な孔士
「どうでもいいけど僕の部屋をたまり場にするのはやめてくれない」
数日後、顔を引きつかせて孔士は部屋でくつろいでいる美琴達に抗議する。
「別にいいだろう」
悪びれのない美琴。
「私は美琴さんに連れて来られて仕方なくよ」
「そうそう」
その割には楽しそうにしているアリスとユイ。どう見ても美琴にあやかって楽しんでいるとしか思えないし第一に二人部屋にあまり大勢くると狭くて仕方がない。
「それに可愛い女の子がこんなにいる事をもっと喜びなさい。そして敬いもてなしなさい」
「何で僕がそんな事をしないといけないんだよ。第一お前ら女の子と言うには戦闘力が高いし気が強いし強情だから兵器が部屋でくつろいでいるみたいで気が休まらないだよ」
発言が気に食わなかったのか美琴が孔士を睨みつける。
「ぜっ、禅も何か言えよ」
「うん? 別にいいんじゃないか」
机で何やら勉強をしている禅宗は別に気にならないのか何でもない様に答える。
「騒がしいでしょうが‼︎」
「お前と旅している時とそんなに変わらない」
「だいたい男の部屋に来るのはまずくない?」
「お前はあの子達をどうにかしようと言うのか? 勇者だな」
生温かい笑顔になる禅宗。戦闘力が高い彼女達では逆に殺されそうである。そして女性陣に睨まれている事に気づく孔士。
特にアリスの孔士に対する視線は人ではなくゴミ虫を見るかのように蔑んだ目をしていた。
「深い意味はないよ。それに僕にも選ぶ権利がある」
「・・・だといいな」
意味深な顔をする禅宗。
「こんにちは」
今度はジャンヌも現れてただでさえ狭い部屋が余計に狭くなる。
さりげなくアリスの横に座り密着すると恍惚の表情を浮べ少し息が荒くなっていく。
「あの姉さん?」
さすがに不審に思うアリスであったがまんざらでもないのか照れて顔を赤くしていた。
「だから狭いよ」
孔士のぼやきをもはや聞いている者は一人もいなかった。
孔士と禅宗のベッドを椅子にするとガールズトークに花を咲かせ始める女性陣。机で黙々と勉強に励む禅宗。それを部屋の隅っこで呆然と見ているしかない孔士はもはやここは安息の場所ではない事を悟るのであった。
「はぁ~」
深い溜息をする。
何とかブリテンにたどり着きはぐれながらも合流できた禅宗達であったが探し人である武藤一刀斎の手掛かりは皆無である。だがそれでも新たな居場所を見つける事ができて一息つけた一行は束の間の憩いを嚙みしめるのであった。
だが目に見えなくても恐ろしい敵が少しずつ近づいてきているのを感じている禅宗は少しでも何とかしようと勉強に勤しんでいる。
後ろでなんだかんだと一番騒がしい孔士に呆れイラついていく。
「孔士、うるさい!」
禅宗の抗議。
「どう考えてもこいつらの方がうるさいだろう」
それもそうだがチラっと美琴を見ると笑顔で禅宗の顔を見ていた。
一瞬でこの部屋にいる人間の戦闘力による順位を計り女性陣には勝てないと判断した禅宗は多勢に無勢と孔士を敵とみなした。というか美琴が敵になった時点で敗北は明白である。
「ぜんっ、ぜんうるさくないぞ。今この部屋でうるさいのは孔士だけだ」
「なんでだよ!」
孔士達の騒がしい声は窓から外まで聞こえてくる。
「まったく若いとは羨ましいな」
しばらく外から様子を見ていたマルクは楽しそうに呟く。
「これから忙しくなりそうだな」
そのまま理事長室に歩いていく。その足は軽やかで浮ついている。
「お前ら出ていけ~!」
孔士対アリス・美琴らの女性連合との舌戦がしばらくの間繰り広げられるのであった。
了
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