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新たな出会い
道なき道を歩き生い茂る草木をどかせながら進む。
「きゃぁぁぁぁ」
夢中で歩いていると聞きなれない人の叫び声が聞こえてきた。
「なんだ?」
急いで声の下へと向かう。
グギャァァァァ
「くっ」
金髪の蒼い目をした騎士が魔物に襲われていた。右手にはレイピアが握られていたがとてもではないが魔物の巨体を斬り裂くには不十分であった。
「くそっ!」
騎士は果敢にも魔物に挑んでいくがレイピアでは致命傷を与える程の傷をつける事は出来ない。それどころか余計に興奮して凶暴になっていく。
「危ない!」
「!」
ガァァァア
魔物の爪が騎士の顔に直撃しそうになるが寸前の所で、孔士が騎士を突き飛ばし爪を避ける事ができた。だが孔士の肩に傷がついてしまい血が流れている。
「土雷!」
孔士の右手に雷が宿り魔物の眉間に直撃させた。開封した時の土雷に比べかなり威力は落ちているがそれでもどうにか魔物を倒す事はできた。
ギャァァァ
眉間が焼け焦げ魔物は断末魔を上げながら倒れ込む。
「ふぅぅ」
禅宗がいない為に開封する事はできない状態でもどうにか倒す事ができホッとする孔士。
「君、大丈夫?」
突き飛ばされた騎士は尻餅をついて唖然としていた。どうやら状況を呑み込めないでいるようだ。
孔士が手を差し出す。
バシッ
騎士は孔士の手を払い自分で立ち上がる。
「あなたは何のつもりなの?」
怒りを表にして孔士を睨みつけるが、その表情からは怒りというより不安と恐怖が読み取れる。
「別に、危なそうだったから助けた」
「誰が助けてと頼んだかしら」
「いやいや、言っちゃあなんだけど僕が間に入らなかったら結構危なかったと思うよ」
「私は騎士よ!傷つく事も死ぬ事も恐れないわ」
「!」
よく見たら女の子である事に気付く孔士。体には洋式の甲冑を着ていて傍目からは分からないが孔士と同じ年頃の女の子であった。
「君、女の子?」
「だったらどうしたというの!」
「なら余計な傷を負わなかった事を喜んだ方がいいんじゃない」
「余計なお世話よ」
騎士は孔士の格好をじろじろ見る。
「あなたこの辺の人間じゃないわね」
「そうだけど」
「そんな民族衣装は見た事ないわ」
「最近、船に乗って・・・」
孔士は鍋に入っているスープを見つける。
グゥゥゥゥ
「あなたお腹が空いているのね」
「うん。仲間とはぐれてもう三日まともに食べていない」
「よかったら食べる?助けてもらったのだし」
「食べる!」
騎士はスープを注ぎパンを孔士に与えた。
「…凄い食欲ね」
物凄い勢いでスープとパンをたい上げる孔士。あっという間に鍋を空にしてしまい騎士を驚かせた。
「よかったらこれも食べる?」
自分の分を渡してしまう。
「ありがとう!」
「ぷっ見てるだけでお腹が一杯になってしまったわ」
孔士の食いっぷりに呆れて思わず笑ってしまう。
「ごちそうさま」
手を合わせ騎士に礼をした。
「死にそうだったから本当に助かったよ」
「私の方こそ助けて貰ったのにあんな態度をとってごめんなさい」
申し訳なさそうにする騎士。
「自己紹介がまだだったね。僕の名前は孔士。よろしく」
「私の名前はアリス。アリス・エルステッド」
アリスは手を差し出し握手を求めた。
「よろしく」
孔士とアリスは固い握手をする。この国に来てやっとまともにコニュミケーションがとる事ができた。
この出会いが新たな冒険の始まりであった。
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