4人が本棚に入れています
本棚に追加
選択
「あなたはこの国に何しに来たの?」
「僕は人探しに来たのだけど、仲間達とはぐれてしまって困っているんだ」
孔士はブリテン公国に来てからのいきさつをアリスに話した。
「それは災難だったわね。でもこの辺りは魔物とか沢山いるから気をつけた方がいいわ」
「そうみたいだね。アリスこそ一人でなにしているの?」
「私はある物を探しに来ていて……」
「アリス?」
「あなたには関係ないわ」
急に暗い顔をして孔士から目をそらす。
「何やら訳ありみたいだね」
「私は先を急ぐのでこれで失礼するわ」
急いで立ち上がり森の奥の方へ歩き出す。
「あの意地っ張りな所は誰かさんに似ているな」
じゃじゃ馬娘の美琴を思い出し思わず笑ってしまう。
「……」
「……」
アリスから少し離れた所を歩く孔士。
「ついて来ないで!」
振り返り孔士を睨みつける。
「さっき見たいに魔物が襲いかかって来たら危ないだろ」
「あなたには関係ないわ」
「ご飯の恩もあるし」
「そんなの気にしないで」
「恩人に何かあったら目覚めが悪いし」
「私には関係ないわ。いいからついて来ないで」
レイピアを抜き剣先を孔士に向ける。
「これ以上ついてきたら許さないわ」
孔士は散歩をするようにレイピアの前まで進む。
「何を?」
剣先が孔士の心臓をとらえる。
「震えているよ」
「!」
「あまり戦闘経験がないようだね」
「馬鹿にしているの?」
「馬鹿になんかしていない。僕はこう見えてある程度の戦闘経験があるから、アリスの邪魔にはならないと思うよ」
「孔士くんが出てこなくてもどうにかなっていたわ」
「お前の剣は対人戦ではまだ有効だけどさっきみたいな大型の魔物には攻撃力が足りない。それは誰よりもアリスが分かっているんじゃない」
アリスは強く睨みつける。
「それでも私は行かなければいけない場所がある」
強く握られている拳。
「これ以上、私の邪魔をしないで」
剣を鞘に収めるとアリスは急ぎ足で先に進んだ。
「やれやれ」
頭を掻き空を見る。
「禅なら何を言わられたってついて行くよな」
孔士は禅宗ならどうするかを思い浮かべると、これまでの出来事が次々と思い出されていく。
「うん!行こう」
このままアリスの身に何かあれば必ず後悔すると感じた孔士は急いで前に進みだす。
その前に歩もうとする姿勢は、かつて鬼と呼ばれた少年と炎滅の巫女と恐れられた少女を救った少年と同じであった。傷つきボロボロになりながらも戦い続けている少年の背中を見てきた孔士には、立ち止まるという選択肢はなかった。
「待ってよ!!」
孔士は早歩きで進むアリス急いでいおかける。
最初のコメントを投稿しよう!