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驚愕
孔士は理事長室からクラスの教室に戻ると自分の席に座る。そのままうつ伏せになると睡眠と取ろうと目をつぶった。暖かな風が眠気を誘い意識が遠のいていく。
「孔士!」
聞き覚えがある声が聞こえてくる。だがここでは聞こえてくるはずがない声に嫌な予感が孔士を支配した。
薄目にしてそっと前を見る。
「孔士起きろ」
美琴が教室の前で叫んでいるような気がするが夢なのだろうとまた目をつぶる。
ドカッ
黒板消しが孔士の頭に直撃する。
「痛い!」
孔士は勢いよく立ち上がり美琴を睨みつける。他の生徒は突然の出来事に呆気にとられただ孔士達を見ていた。
「人が自己紹介している時に寝るなど失礼だろう」
「だからって頭に固いものは投げるのは危ないだろうが」
「お前は石頭だから大丈夫だ!」
「ふざけんなよ! 痛いものは痛いんだぞ」
自信満々の美琴を見て怒りが湧く孔士。
すかさず黒板消しを投げ返すが
「えっ?」
美琴の隣でなりゆきを見ていた禅宗の頭に黒板消しが直撃した。
「ぐげっ」
倒れ込んだ禅宗は目を回している。
「大丈夫か禅宗?」
「・・・何とか」
美琴が倒れた禅宗に手を差し伸べる。禅宗は手を掴み立ち上がるとほこりを払いこほんと一息ついた。
「・・・後で説教な孔士」
笑顔でいながらも殺気を放つという器用なことをして見せる禅宗。そして血の気が引き眉をひくひくさせる孔士。
「今日からお世話になります武藤禅宗です。よろしく」
「美琴だ。よろしく頼む」
二人は短い自己紹介をする。その後担任がどういった経緯で編入してきたかを説明しているが殆どはでたらめで違和感がない程度のこじつけでしかなかった。
「なおそこの孔士くんとは同郷なので共々仲良くするように」
二人共席に着くといつものように授業が行われた。
放課後、孔士が部屋でゆっくりしていると突然扉が開き禅宗が入ってくる。
「よう、孔士」
「ぜ、禅? 何だよいきなり」
突然の来訪に驚く。
「今日から俺もこの部屋に住むからよろしく」
「はぁ。何がどうなっているんだよ」
「あれ? 理事長から何も聞いてないのか?」
「聞いてない!」
どうやら作為的に孔士に情報が伏せられていたようだ。更年期と言った事による報復と考えられマルクの悪意が感じられる。
「教室で詳しい事は話せないからなこれもしょうがないな」
休み時間に説明を求めたが後でと後回しにされていた。それ以上に授業を理解しようと教科書を鬼気迫る表情で見ている禅宗に孔士はドン引きする。これ以上引き下がっても勉強に巻き込まれると思った孔士は諦めることにした。
「それにしても二人共制服じゃないんだね」
禅宗と美琴はいつもの着物姿だった。
「美琴が嫌がっていたら理事長がこの格好でもいいと許してくれた」
「僕の時は無理矢理制服を着せられたけどね」
「似合っているからいいだろう」
「それはどうも」
孔士は頭をかくと壁にもたれかかる。
「それでこれからどうするの?」
「取りあえずここを起点に師匠を探すよ」
「ここの人達に思いっきり関わっているけどいいの?」
「もうしょうがないな。地道に探しても膨大な時間がかかるし学園に所属していれば身分がはっきりしていて余計な事に気をまわす必要がない」
「なんか利用されている気がする」
「それはお互い様だよ」
マルクの真意は分からないがそれでもそれ
相応のリターンがあるので互いに利用し合うという形で話はまとまっている。
「それに孔士だってもうここから離れられないだろう」
「それはそうだけど」
孔士から今までの経緯は聞いているので大まかな事情は分かっている。孔士の決断は禅宗と美琴は驚きはしたがこれといって責める事はなかった。
「しかしあの孔士が自ら面倒毎に首を突っ込むとはな」
禅宗はニヤつきながら孔士の顔を見る。禅宗の視線に目をそらし居心地が悪そうな顔をした。
「う・・・うるさいなぁ。いろいろあったんだよ」
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