騒がしい日常

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騒がしい日常

 「孔士くん!」  アリスとユイがノックもせずに部屋に入ってくる。  「だからノックをしろよ」  孔士の抗議は華麗にスルーされた。  「なんだ、なんだ?」  突然の出来事に禅宗も何ごとかと驚く。  「あれ?あなたは編入生の…」  禅宗の存在に気づいたアリスとユイ。  「君は確か孔士と一緒に戦っていた女の子?」  「アリス・エルステッドです」  「ユっ、ユイ・フィリスです」  二人の自己紹介に禅宗は目を瞬かせる。 孔士がもうこの土地の人間しかも可愛い女の子と交流している事に驚いてしまう。  「改めてよろしく」  何とか平静を保ちつつ優しく微笑む。  「む…とう…くんと呼べばいいのかしら?」  日本名に慣れていない二人は戸惑う。  「禅宗と呼んでくれ」  「分かったわ。禅宗くん」  アリスとユイはこくりと頷いた。  「それで何しにきたの?」  孔士は面倒になってきたのかぶっきらぼうな聞き方をする。  「女の子がわざわざ孔士くんの様子を見にきてやったのだからありがたく思いなさい」  「要するに心配だから見にきたってことだよ」  「ちょっ、ユイさん変な事言わないで」  頬を赤くして孔士から目をそらした。 こほんと一息つくとアリスは誤魔化すように真面目な声色で話はじめる。  「禅宗くんと美琴さんだったかしら。孔士くんの仲間がいきなり編入してきたからその事情を聞きにきたの」  「別にアリスには関係ないじゃん」  「あら。散々人の事情に踏み込んで引っかき回した男がどの口で言うのかしら」  「うっ」  「そっ、それに私達はもうコンビなのだからお互いの事をもっと知っておかないと」 後半どんどん声が小さくなっていく。  「え~と」  孔士もアリスの態度にどう対応していいか分からず頭を掻いて言葉に詰まる。  「禅宗!」  今度は美琴が扉を蹴破って入って来た。  「今度はなに?」  さすがの孔士もうんざりして声が小さくなる。  「なんだ? 孔士もいたのか。なら丁度いい。お~い入ってくれ」  美琴は扉の向こうから誰かを呼ぶ。  「ジャンヌ?」  ジャンヌ・エルステッドが神妙な顔で入ってくる。照れているのか顔が赤くもじもじと手を動かしていた。  「姉さん!」  「アっ、アリス何故ここにいるのですか?」  お互いに予想外の場所で出会ったので驚いている。  「私は孔士くんに用があったから…」  「わっ、私は美琴さんに無理矢理連れて来られただけですよ」  何に焦っているのか顔を真っ赤にして身振り手振りで抗弁をするエルステッド姉妹。  「美琴は何でジャンヌと知り合いなの?」  先日に殺し合いを繰り広げた二人が仲良く孔士の部屋に来た事に疑問をいだく。  「私はジャンヌと同室なのだ!」  「えっ!そうなの?」  「・・・はい」  なぜか孔士から頬を膨らませて目をそらすジャンヌ。  「どうやら私の部屋以外空いていなかったようですね」  神具使いと同室などかなりの手練れか図太さがなければできるはずがない。美琴は実力もさることながら殺し合いをした相手と簡単に打ち解ける当たりかなりの図太さと深く考えなさを併せ持つおバカさんと言えるだろう。  「おい孔士。お前から不愉快な視線を感じるのだが」  そんな孔士の考えを察したのか殺意を込めて睨み付けてくる。  「気にせいだよ。そっ、それで何か用なの?」  恐怖で声を引きつかせる孔士。  「えっとですね。その、今回は孔士くんに助けてもらぅたのでお礼が言いたくて」  ジャンヌがもじもじしながら話を進める。  「そんなの気にしなくていいよ。今回は成り行きもあったし最後は禅宗に助けられたから僕だけの力でジャンヌを止めた訳ではないし」  何でもない様に手を扇いだ。  「それでも私は貴方に救われました。ありがとうございました」  素直に頭を下げてお礼を言うジャンヌにアリス達はただ驚いていた。  「アリス、貴方もよく私を止めてくれました。お陰で犠牲者を出さずにすんだことにお礼を言わせてもらいます」  「私は何もしていない。姉さんを止めたのは孔士くんよ」  照れているのか思いっきり目をそらしてしまう。  「闇に囚われていた時アリスの声が聞こえてきましたよ。こんな私をお姉ちゃんと呼んでくれた時はとても嬉しかったです」  「姉さん…」  アリスは久しぶりの姉妹の会話に感激してジャンヌに抱きつく。  「甘えん坊な所は相変わらずですね」  感動の場面のはずが孔士の目にはジャンヌの恍惚に満ちた表情が見えた。どうやら今まで抑圧していたシスコンが解放されたのだろう。  「ふふふ」  「ジャンヌ。欲望が顔に出ているよ」  孔士の指摘にはっとしたのか顔を引き締める。  「よくわからんが一件落着でいいのだな!」  事情をよく理解していない美琴だがこの現状において的確な表現をする。  「これから騒がしくなりそうだな」  「はははははは」  禅宗のぼやきを心底楽しそうに聞くユイであった。
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