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光は気がついた。先生が来る日は、必ずお父さんがいない。
先生が面談に来るようになって3ヶ月経っていた。
先生とお父さんは昔からの友達だって聞いていたのに、お父さんは会いたくないのかな。まぁ、お父さんが居ないのは普通のことだから僕の考え過ぎかもしれないけど。
僕のお父さんは凄く頭がいいらしい。でも、いつもイライラしている。話しかけると怒鳴り返してくる。僕が小さい時からそうだから、もう、話しかけないって決めた。海斗も同じ。
お母さんは、前より少しは元気になった。おじいちゃんが母家で寝るようになっても、先生から治療を受けるようになっても、お母さんの体には新しいアザができている。
きっと「何か酷いこと」も続いているんだ。
僕は、お母さんを助けてあげたい。助けてあげたいのに僕の身体は小さくて、お父さんには敵わない。
僕の右手の「護り珠」は、僕しか守ってないのかな。お母さんの左手の「護り珠」はお母さんを守らないのかな。
海斗が昼寝をしちゃったので、僕はそんなことを考えながら母家の縁側に座っていた。おじいちゃんとお父さんは本殿の方に行っている。
お母さんは母家で横になっている。お母さんと一緒に僕もお昼寝しようかなと思いついて、お母さんが寝ている部屋に行ったら、お父さんが居た。
お母さんは、口にタオルを詰め込まれて寝巻きを脱がされ暴れていた。
「ガキは来るな!」とお父さんが僕に凄んだ。
「何か酷いこと」はコレだったんだ!酷い、酷い、酷すぎる。僕は僕が壊れてしまいそうな怒りを感じた。
目の前が真っ赤になった。僕は右手の護り珠を左手で前にずらすと3本の指で1番大きな玉を掴んだ。それは熱を持って真っ赤になっていた。
僕は「うわあぁぁぁ!」と叫び声を上げると玉をお父さんの脹脛に押し付けた。ジュッと皮膚が焼ける匂いがした。
その後は、闇雲に玉をお父さんに押し付けた。
お父さんは逃げ出した。
外に出て庭の方に向かっている。僕は後を追いかけた。でも、距離は開くばかり。
それが、できることを僕はなぜか知っていた。玉を握りしめて、今度は左手から「火そのもの」を立ち上げた。“縄“にした。左手で火の縄を操作して、お父さんの身体スレスレに何度も火の縄を振るい威嚇した。
「止まれ!逃げようとするなら、焼き殺す!」普段の僕からは考えられない大きな声で叫んだ。
お父さんは止まった。そして、僕に向かってヘラヘラ笑い出した。恰も冗談だというような態度で僕に言った。
「まぁ穏便に行こうぜ。」
「ふざけるな!母上に何をする!さっさと母上から、先ほどの貴様の下劣な行いの記憶を消せ!今直ぐやれ!」
僕は火の縄で翔の周りを取り囲んだ。
「記憶を消す?そんなこと出来るわけないじゃないか。」と翔が嘯ぶいた。
「私は知っている。お前のことは全部知っている。ここで焼き殺してもいいんだぞ!死ぬかやるか、決めろ!」と光の口は光が思ってもいないことを叫んだ。光自身もその自分に驚いていた。
翔は光の「火」に脅されながら、玉で陽の記憶を消した。
光は、火で翔の髪を焦がしながら「今度やったら、その場で焼き殺す。」と言うと気を失った母親の布団に潜り込んだ。
翔が呆然としていると、晃が部屋に入って来た。
「すごいな。光は田中家の逸材だった。」
「親父、こいつ何なんだ。まだ小学校にも行ってないガキだぜ。」
「力と年齢は関係ない。お前は、これから不自由になるだろうよ。」
翔は晃を睨むと部屋から出ていった。
晃は光の頬を優しく叩いた。
「あれ?おじいちゃん……。あっ、あのね。僕にも力があったんだ。火だよ。火でお父さんをやっつけた。」
「ああ、見てた。すごい力だ。でも、それは使わないほうがいい。使いすぎると早く死んじゃうんだ。お父さんは十分懲りたから、これからは、言葉で『やるぞ』というフリをしなさい。」
「うん。わかった。お母さんとお昼寝してていい?」
「いいよ。寝る子は育つ。。。だからね。」
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