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27、結婚指輪
先週、水川での最後の逢瀬の時に陽と結婚した。
準備は前々からしてあった。
「今日、結婚しよう。」と僕が言ったら、陽は「この先の話はもう終わったでしょ。」と言った。
「いやいや、僕が言ってるのは事実婚だよ。」
陽は訳が分かりませんという顔をしていた。そこで僕は指輪を出した。二つのケースに入った二つの指輪。
陽の指輪はファッションリング。タチアオイの花をモチーフに少し大きめのルビーを使ってもらって指輪自体はプラチナ。サイズは陽の右手の薬指に合わせたオーダーの1点物だ。それを僕は陽の指にはめた。
その後、陽は普通のマリッジリングを僕の左手の薬指にはめた。
陽には「その都度で判断して、外してもいいよ。でも、僕は外さない。これからは既婚者で通す。事実婚の既婚者だ。」と言った。
籍を入れるのは、ずっと先でも、もう僕達は結婚した。子供も二人いる。
考えてみれば、陽と出会って12年近く経つのに、僕はプレゼントを何一つあげてなかったんだ。
陽はねだってこないし、僕は気が利かないし。
この先も僕と陽は、すんなり法律婚には辿り着けないだろう。
この関係は、他人からすれば『ただの不倫』ということになるんだろう。
でも、僕たち家族にとっては違う。
人生は計画通りにならない。それも知っている。それが分かるくらいには、僕も陽も大人になった。
『今』を大切に一歩一歩、今此処、この瞬間を大事に大切に生きていく。僕と陽と未だ小さな息子二人を連れて…。
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