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どうやら心配していたのはボクだけじゃなかったようだ。時間を違えて、圭くんがやってきた。
美月とは違って静かに参拝する。
ふ、と目があった。
「お前、本当にここにいるんだな」
「にゃ」
「俺がここに来たこと、美月にはないしょだからな」
恥ずかしそうに頬を掻く。
「美月は明日面接なんだ。受かるといいなと思って。ま、お前に言ってもわかんないよな」
わからなくはないけど。でもボクにはそれを伝える手段はないわけで、黙って圭くんの話に耳を傾けた。
「あいつ、俺の受験のこと祈りに来てるんだろ? 試験は再来週だから、それまで相手してやってよ」
おおーい、美月。圭くんにバレてるぞ。ないしょなんじゃなかったのか?
圭くんの試験は再来週だけど、きっと美月は結果が出るまでここに通う気がする。だんだん美月のことがわかってきた。
それにしても……自分のことより他人のことを願うとは、美月も圭くんも健気というか微笑ましいというかなんというか。
仕方がないなぁ。
ボクはうーんと伸びをする。
ジャンプして鈴の紐にしがみつき、ガランガランと揺らした。小さな神社に響く乾いた音。柏手は打てないので肉球をペタンと合わせた。
『どうか美月と圭くんの受験が上手くいきますように』
ほら、ボクも一緒に願ってやったぞ。
美月も圭くんも、受験上手くいくといいな。
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