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圭くんが来たのはその日だけで、翌日からまた制服姿の美月が一人でやってきた。いつものように受験のお祈りをしてからボクの方に顔を向ける。
「今日もいるねぇ」
ニコニコと楽しそうに笑う。
ここは境内で一番日当たりが良くてあったかいからいるだけ。あとは美月みたいな参拝者を眺めるのが面白いだけ。
「昨日はびっくりしたね。もー、ネコさんないしょだよって言ったのに、危うくバレるとこだったよ」
おいおい、なぜかボクのせいになってないか? むしろボクは美月を助けてあげた側だと思うけど。
「でもこれで神様も圭くんのこと認識してくれたよね。第一希望、受かるといいなぁ」
ふふっと笑って美月は帰っていった。
美月はいつも圭くんのことを祈っている。美月は受験ではないのだろうか。昨日見た感じでは同級生のように見えたのだけど。
帰ったと思った美月がまた戻ってきた。
「ネコさん、やばい! 忘れてた!」
バタバタと騒がしい美月は再び鈴を鳴らし柏手を打つ。
「明日の面接頑張れますように!」
今までで一番雑にお願いをしている。じっと見ていたら目があい、「明日わたし面接なんだー」とあっけらかんと言い放った。
おーい、やっぱり君も受験生じゃないか。圭くんのお願いばかりして、自分のことを忘れてるって……大丈夫か? やはり天然かドジっ子なのか?
ボクが心のなかで盛大にツッコミを入れているとも知らず、美月はじゃあねーと軽やかに手を振って去っていった。
美月、大丈夫か。
明日の面接、ボクのほうが心配になるんだけど。
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