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「春くん、迎えに来てくれてありがとう」
自宅のマンションに着いて、玄関に上がるとすぐにスプリングコートを脱いだ。
まだ酔いがさめない。
それは、いつもと違う春紀のせいだ。
「お腹減ってない? 何か作ろう……かっ!?」
突然後ろから抱き締められ、身動きがとれない。
「春紀!?」
びっくりして振り向いた途端、唇を奪われた。
ほのかにお酒の味がする。
春紀も飲んでたんだ。
だけど酔っているにしたって、普段からは想像できない行動だ。
深いキスが終わり、やっとのことで解放されて息を整える。
頭が真っ白でふわふわして、何も考えられない。
「ただの飲み会なのに、なんでそんな可愛い服着たの?」
買ったばかりのワンピースを指して春紀は言った。
スカートの中に手を入れて、艶めかしく私の太腿を撫でる。
「ホントは、あいつと会ってたんじゃないの?」
予想外の言葉に絶句した。
「あいつって……?」
「……店に来る男」
まさか。本当にどうしちゃったの?
春紀がそんなこと言うなんて。
「違う。本当に……山田さんと……」
「じゃあ、なんで違う匂いしてるの?」
春紀が首筋を舐めて言った。
「いつものももの匂いじゃない」
……香水のこと、気づいてくれてたんだ。
「ちょっと、待って」
そのままソファーに連れられ、強引に寝かされると春紀は私の上に跨がる。
ネクタイを緩めながら私を見下ろす目つきは据わっていて、ゾクリと鳥肌が立った。
こんな春紀、初めてで。
「あ……待っ……」
春紀はまるで味わうように舌を這わせ、身体中を愛撫する。
お風呂に入っていないから恥ずかしくて、小さく嬌声を上げながら身を捩った。
「匂い、元に戻して」
じっと見つめられ心臓が高鳴った。
もう数えきれないほど春紀に抱かれているのに、ときめきは全然色褪せなくて。
「……俺が決めた匂いじゃないとだめだよ」
彼らしからぬ発言に、逐一胸が締めつけられる。
「わかった?」
言われるがままコクリと頷く。
すると春紀は満足げな顔をして、自身の服も脱ぎ始めた。
「待って……ここで?」
電気が煌々とついているリビングでするのは恥ずかしい。
こんなこと、今まで一回もなかったのに。
「もう待てない」
私の足を広げ、身体を繋げていく。
いつもより強引な動きにびっくりして、でも喜びの方が勝った。
春紀がこんなにも私のことを求めてくれている。
夢中になって汗をかいて、じっとりと熱を帯びた視線で見つめて。
「ももは俺のだから」
ぼそっと呟いた声に涙腺が緩んだ。
……嬉しい。
春紀が初めて嫉妬してくれた。
「はるきぃ……」
泣きながら刺激の揺らぎに耐え、せり上がる快感に悶える。
いつにも増して激しく突き立てる春紀にしがみついて、甘い声を上げた。
「春紀……好きっ」
だけどやっぱり好きを伝えるのは私の方。
やがて迎える絶頂に仰け反った瞬間、一際奥深く私を突いた春紀が、艶めかしい吐息を漏らした。
「……愛してる」
耳元でそう響いた瞬間、私の精神は遥か宇宙に飛んでいった。
「もも?……もも? 大丈夫か?」
……もう、キャパシティを越えました。
「もも!?」
そのまま気を失って朝を迎えるなんて、なんてもったいないことをしてしまったんだろう。
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