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「美味しい……」
春紀が作ってくれた焼きそばは濃い味つけで美味しい。
ソースが焦げたところが香ばしくて。
それに、私の好きな紅ショウガを、甲斐甲斐しくお皿にのせてくれる。
「ありがとう」
「コップ貸して?」
更に甲斐甲斐しく麦茶をついでくれる春紀。
「ど、どうも……」
何故こんなに優しいの?
やっぱり浮気してるから?
「もも、口に青のりついてる」
「え? 恥ずかしっ」
そう言ってティッシュをとろうとした瞬間、ふいに春紀が立ち上がり近づいて、私の口元をペロリと舐め上げた。
「っ…………」
「とれた」
「あああありがとう」
ボッと火を噴くように顔が熱くなる。
それでもいつものクールな無表情の春紀。
だけど一瞬だけ、ふっと柔らかく笑った。
その笑顔に心を撃ち抜かれ、クラクラと目眩がする。
……やっぱり変だ!
何故に甘々? こっちが溶けて原形とどめないくらいに。
「食ったら買い出し行かないか? まとめ買いしたら楽だろ?」
「ホント? 助かる!」
春紀とデートだ!
「何着てこう……」
そうニヤけると、春紀も苦笑する。
「大袈裟だよ」
「だって、例え近所のスーパーでも、春紀とデートだもん」
それに、春紀から誘ってくれるのが嬉しい。
「待ってて。急いで支度するから。メイクもし直さなきゃ」
「……可愛いな」
「そうでしょうそうで……ハァー!?」
我に返って耳を疑った。
春紀が可愛いなんて言う!?
「ハァァァー!?」
「落ち着けよ」
おかしい! おかしい!
やっぱり何か裏がある!
やっぱり浮気を!?
立ち上がり絶叫する私を、困惑して見上げている春紀。
一体何を隠してるの!?
「助けてぇー!」
助けて! 山田さん!
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