溺愛がとまらない

2/2

727人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「はい、あーんして」 「……恥ずかしいよ」  エプロン姿の春紀が、私の口にスプーンを近づける。  くすぐったくて、ニヤけながら春紀が作ってくれたオムライスを頬張った。 「美味い?」  とろっとろの笑顔でそう尋ねる春紀に、全身の血を沸騰させながら何度も頷く。 「よかった。愛情たくさん込めたから」  オムライスにケチャップで書いてある文字は、『ももこLOVE』。 「………………っ」  ……だめ。まだ耐性がついてない。  甘々な、溺愛してくれる春紀に。 「お腹の赤ちゃんの分までたくさん食べないと」 「そ、そうだね」  春紀は満足げに私を見つめ、口元についたケチャップを指で拭ってくれる。 「桃子、可愛い」 「ぶっ!」  だめ! 慣れない!  まるで、ほれ薬を飲ませてしまったみたい。  恍惚とした瞳の春紀を見て、昂ぶる気持ち。  ……ミステリアスで何を考えているかわからない彼も好きだったけど。 「愛してるよ、桃子」  こうして愛がダダ漏れしている春紀はもっと好きだ。 「好き! 好き! 好き!」 「好き! 好き! 好き!」 「好き! 好き! 好き!」 「好き! 好き! 好き!」  好きがエンドレスループしそうなところで、「おい」と胎動を感じた。   赤ちゃんが、私達に猛烈なツッコミを入れる。 「ごめんね、忘れてないよ」  二人で私のお腹をさすり、赤ちゃんに呼びかける。 「好き! 好き! 好き!」 「好き! 好き! 好き!」  私達の溺愛は、きっとこの子へ向けて更なる進化を遂げるだろう。  そう考えるとたまらなく愛しくて、再びお腹を優しく撫でた。         【おしまい】
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

727人が本棚に入れています
本棚に追加