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「はい、あーんして」
「……恥ずかしいよ」
エプロン姿の春紀が、私の口にスプーンを近づける。
くすぐったくて、ニヤけながら春紀が作ってくれたオムライスを頬張った。
「美味い?」
とろっとろの笑顔でそう尋ねる春紀に、全身の血を沸騰させながら何度も頷く。
「よかった。愛情たくさん込めたから」
オムライスにケチャップで書いてある文字は、『ももこLOVE』。
「………………っ」
……だめ。まだ耐性がついてない。
甘々な、溺愛してくれる春紀に。
「お腹の赤ちゃんの分までたくさん食べないと」
「そ、そうだね」
春紀は満足げに私を見つめ、口元についたケチャップを指で拭ってくれる。
「桃子、可愛い」
「ぶっ!」
だめ! 慣れない!
まるで、ほれ薬を飲ませてしまったみたい。
恍惚とした瞳の春紀を見て、昂ぶる気持ち。
……ミステリアスで何を考えているかわからない彼も好きだったけど。
「愛してるよ、桃子」
こうして愛がダダ漏れしている春紀はもっと好きだ。
「好き! 好き! 好き!」
「好き! 好き! 好き!」
「好き! 好き! 好き!」
「好き! 好き! 好き!」
好きがエンドレスループしそうなところで、「おい」と胎動を感じた。
赤ちゃんが、私達に猛烈なツッコミを入れる。
「ごめんね、忘れてないよ」
二人で私のお腹をさすり、赤ちゃんに呼びかける。
「好き! 好き! 好き!」
「好き! 好き! 好き!」
私達の溺愛は、きっとこの子へ向けて更なる進化を遂げるだろう。
そう考えるとたまらなく愛しくて、再びお腹を優しく撫でた。
【おしまい】
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